
「興和」といえばまず思い浮かぶのは薬のイメージですが、実は100年以上も繊維に関わっている会社なのです。現在は各アパレルメーカー様へ繊維に関する様々な供給を行っている興和が、オーガニックコットン生地の開発・生産を始めました。
なぜ今オーガニックコットンなのか?
なぜ興和がオーガニックコットンなのか?
休日の原宿オフィスにて
当ウェブサイトの中心メンバーであり、テネリータ開発生産を担当する
岡野さんにお話を聞きました。
聞き手:井上(興和) 写真:南雲さやか イラスト:園城幸子
——そもそも、テネリータって何なのか教えてください!
テネリータは、小文字のteneritaと、大文字のTENERITAで使いわけています。teneritaは、オーガニックコットンのタオルやシーツを中心に展開するタオルブランド。そして、そこから派生したのがTENERITA。昨年2008年にスタートしたばかりの、衣料品を中心に展開する、“オーガニックコットンプロジェクト”です。
——どんな経緯でTENERITAが始まったんですか?
僕はもともと立ち上げのメンバーではないんですが、オーガニックコットンでアウターの素材を作ってほしいという依頼を企業の方からいただいたことがきっかけ
です。その頃には、もうタオルテネリータは始めていたので、そちらから教えてもらいつつ……。オーガニックコットンをちゃんとやるのであれば、タオルテネ
リータがやっているような、
第三者機関に認証されるモノ作りをやった方がいいという話になり、生地作りから縫製などの最終段階まですべて網羅できる大きいプロジェクトが立ち上がりました。
——興和という商社が、あえてオーガニックコットンをやる意味は?

興和グループは、1894年に綿布問屋として誕生して以来、綿の生地を作ることに関しては115年の歴史があります。生地を染める前の糸を作って織るという部分が、昔から得意なんです。そういう点ではメーカーさんの認知度も高いと思います。そして、興和の一番の強みは、川の流れで例えると、糸を作る部分が川
上だとすると、それを製品化して小売り販売する川下まで、
源流から河口までを1本の糸としてつなげられるチームを持っているということ。それでなければ、オーガニックコットンの証明書を出すことができないんですね。これが成功の大きな要因だと思います。
——これまでに苦労した点や、興和ならではのポイントはありますか?
オーガニックコットンには
国際基準というものがあります。まずは、それを読み解くところから始まりました。英文を日本語に訳しつつ……(笑)。検査方法を日本の場合に置き換えて、現実的にで
きるのかというところからのスタートでした。それが、なかなか現実的には難しいので、穴が開いていると思われる部分は、穴埋めした新基準を作っていきました。それが、テネリータのポイント。国際基準をクリアしたというだけでももちろんポイントにはなるのですが、合理性があるものを自分たちで作っていったと
いうのがテネリータのもうひとつのミソになっています。
——オーガニックコットンをファッションに取り入れるということで、改めてでてきた問題はありますか?
一番に染料の問題ですね。まず、オーガニックコットン市場自体がほとんどは染色をしていないものです。カラードコットンといわれる綿花自体が持っている色は、日焼けや光による退色をどうしても避けられない。タオルやシーツなら、それでも問題はないんですが、ファッションに取り入れるとなると話は別です。
「環境にいい」ということで、目をつぶってくれる消費者の方もいますが、興和のビジネスとしては
多くの人に広く商品を手にとってもらうことが環境対策のひとつだと考えているので、クオリティに関しては妥協せず、通常のコットン製品と同じ品質で提供したい。そこで私たちは、化学染料を使っているんです。
——日本ではまだまだその理解は難しそうですね。「せっかくのオーガニック製品なのに、化学染料を使うなんて!」という人もいるのでは?
そうなんです。私たちの考えとしては、染料を使わないとファッション製品にはならない。もちろん天然染料という選択肢もあったけれど、やはり商品のクオリ
ティを保つことがなかなか難しい……。ならば、私たちが今まで培ってきたノウハウを使って、より品質のよいものを作りたい。
国際基準のGOTSの中に化学染料を使っても基準を確保できるというのがあったので、そちらでやっていこうということになりました。実は天然染料を使用したときより、化学染料を使用した方が安全性が高い事もあるんですね。
——「ナチュラルなものをナチュラルなまま着たい」という考え方を否定するのではなく、違うベクトルに向かったということですね。
そう。なぜそのベクトルに向かったのかというと、無染色の商品がどれだけ市場に広がっていくのだろうと疑問に感じたからです。
市場が増えなければ綿花農場も増えない、実際に手にとってくれる人が増えない限りはオーガニックはなかなかファッションに浸透しない。それではやる意味がないと感じたのです。
——オーガニックがファッションでいられるための土壌を、興和が作ろうとしているんですね。
今話題になっている「ファストファッション」が象徴しているように、ファッションは常に新しいものを消費者に提供していかなければならない。無染色で色に限りがあるというのは、ファッションビジネスとして成り立ちにくくなってしまいます。これは私の意見ですが、
「環境商品」というのはビジネスとして成り立たなければ長くは続かないと思うんですよね。長く続いてこそ、市場にしっかりと浸透していく。その仕組みを私たちが作っていかなければ。
——オーガニックを選択する人が増えると、ちょっとだけファッションも変わるんでしょうか。
よく、オーガニックコットンの仕組みを使った場合に、どこかに寄付はするのかと聞かれます。ビジネスとして成り立てばそういうことも考えていますが、まず一番の根底に
オーガニックコットンに切り替えることで、それはすでに社会貢献になっているということを理解してもらいたい。オーガニックコットンを使うことだけで、環境に貢献しているということをまだわかってもらえていないんです。オーガニックコットンの服を着るということで環境活動に参加してもらいたいですね。
——エコロジーとファッションの融合。そのための舞台を作るのが、テネリータの仕事なんですね。
“エコ”っていってもなかなか売れない。エコだけで興味がある人はまだまだ少ないですから。エコを意識せずに消費者が買っていて、気付いたらオーガニックコットンだったっていう位が丁度いいんで
す。デザイナーさんたちにもエコな素材をあまり意識せずに作りたいものを好きなように作ってもらっていますよ。その素材を私たちが調べて、環境にいいものを用意すればいいだけの話ですから。もちろん最低限のルールは決めていますが、限られた範囲内で遊びましょうと常に言っています。私たちの役割は、遊べる
土壌をこれから少しずつ広げていくということですね。
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