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コラムVol.5 オーガニックコットンと組換えワタ

茨城の畑も2年目の春を迎え、ジャガイモの種イモの植え付けを行いました。畑はJA新治直売所のすぐ近くにあり、この直売所はちょっとした観光スポットとしてもなかなかすぐれものなのですが、詳しい紹介は次の機会に。

jgim.jpgこの畑は元々長期間休耕地として放置されていたため、土地が荒れており、スギナが大量に生えて来ます。昨シーズンは一生懸命スギナの地下茎を掘り起こして除いたのですが、ゴールデンウィークには作物が植わってないところが一面緑の絨毯になってしまい(もちろんスギナの)、さすがにめげて1回だけ除草剤ラウンドアップを使うことにしました。除草剤の効果はてきめんでしたが、ジャガイモを植えたあたりには撒けなかったので、また一生懸命手作業でスギナを除いています。おかげで筋肉痛が…。

畑の話ばかりで終わってしまうと、このブログの管理人に怒られますので、そろそろ本題に…。(※そんなこと無いですよ→管理人)

私の担当記事がコラムに変更になりましたので、少しボリュームアップして、引用情報は最後にまとめました。

また、このコラムでは、ワタ植物「ワタ」綿繊維そのもの「コットン」と呼んでいます。
前回「1994年の全殺虫剤出荷額の22.5%がコットンに使われている」と書きましたが、現在ではこの数字は過去のものになりつつあります。何故ならば、本HPの藤森のブログ(2010.4.13)にも書かれているように遺伝子組換えワタ(genetically modified cotton、以後GMワタといいます)が登場したからです。

2009年現在、全世界のワタの作付面積の49%がGMワタになっており、各国のGMワタ作付面積はアメリカ88% (2008)、中国60% (2009)、インド76% (2008)、アルゼンチンとオーストラリアはいずれも95% (2007)となっています1)

GMワタは、農薬を使用しないでも虫害を防げるので、オーガニックコットンの理念と合致するように思えるのですが、テネリータが認証を受けているGOTS基準では、遺伝子組換え生物とその生産物(酵素など)の使用を禁止しています2)。GMワタももちろん禁止です。
前回の農薬で触れたのと同様に、食品では無いコットン自体の品質、安全性はGMワタであろうと非GMワタであろうと違いはありません。それでもGOTSがGMワタを禁止にしている理由について、事実と推測を交えてもう少し踏み込んで見ましょう。


ひと括りにGMワタと言っても日本で厚生労働省の食品(綿実油)としての安全性審査の手続きを経たGMワタは20品種あります(2010.5.12現在)3)
遺伝子組換えにより、GMワタに与えられた形質は除草剤耐性害虫抵抗性の2種類で、両方の形質をあわせ持つ品種もあります。除草剤耐性ワタには、除草剤グリホサート(ラウンドアップ)やグルホシネートやブロモキシニルに対する細菌由来の分解酵素や無毒化酵素(アセチル化酵素)の遺伝子を組み換えてあります。
除草剤耐性ワタの使用目的は、「より多量の除草剤」を散布して除草効果を高めることにありますので、そもそもオーガニックコットンの基準から外れます。

また、これらのGMワタは除草剤を完全に分解するわけではないので、中間代謝物や修飾体が化学物質として植物体に残る可能性があります。これが、GOTSがGMワタを排している客観的かつ科学的な理由の一つです。

一方、害虫抵抗性ワタ(Btワタ)は、細菌バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の殺虫性毒素タンパク質(学名の頭文字をとってBt毒素といいます)の毒素ペプチド遺伝子を組み換えたものです。Bt毒素は昆虫の消化管内で部分消化され殺虫性毒素ペプチドが出来ます。
この毒素ペプチドが昆虫の受容体に結合して殺虫毒性を発揮するのですが、哺乳動物にはその受容体がなく、ヒトに対する毒性はありません(以上、Wikipediaよりの抜粋)。タンパク毒素ですのでヒトに対してアレルギー誘発性を示す可能性はありますが、これまでそのような報告は無く、綿実油はタンパク質を含まないので問題はありません4)

コットンについても同様にタンパク質は殆ど含まれませんし、そもそも食品で無いので問題はありません。では、GOTSがBtワタをも含めて禁止しているのは何故でしょう。それは、農薬と同様に生物多様性への影響が考えられる為ではないでしょうか? Btワタの生物多様性への影響を推測して見ましょう。

1.    Btワタはコットンボールワームなどのチョウ目食害昆虫に対して作出されたものですが、Btワタを食べたり、植物体液を吸ったりするその他の昆虫にも影響します。10年間の中国での調査の結果、Btワタの栽培は、この地域の害虫数のバランスに影響し、以前はきわめて少数であったカメムシが近年急増していることが報告されています5)

2.    Btワタを食べた昆虫を更に食べた昆虫(トンボやカマキリなど)にも影響が出るかも知れません。また、コットン収穫後の枯れた植物体を食べるゴミムシなどにも影響するかも知れません。Bt毒素はタンパク質なので速やかに分解して影響は少ないのでしょうが…。

3.    交雑により組換え遺伝子が他のワタや野生のワタ科植物に拡散する可能性もありますが、最近のGM作物は花粉を介した遺伝子拡散を防ぐ工夫が施されています。

4.    GMワタの遺伝子組換えは、アグロバクテリウム法により行われています。詳しいことは省きますが、GMワタにアグロバクテリウムが再感染することにより、他の植物へ組換え遺伝子が水平伝達され、その植物を食べる昆虫に害を及ぼす可能性があります。また、害虫抵抗性を獲得した植物だけが増えてしまう可能性もあります。実際は、遺伝子伝達に関わる余分な遺伝子が除かれていることを確認したGMワタを栽培しているので問題は無いとされています。

GMワタをオーガニックコットンとして扱うには、以上のような長期的かつ間接的な遺伝子多様性への影響を考慮する必要が残っていますので、GOTSが、テネリータが、GMワタを排除するのは現段階では当然の判断でしょう。ただ、GMワタはコットンの生産性、経済性を大きく損ねることなく農薬の害を減らすことができる一つの有効な手段です。次回はもう一度、ヒトやその他の生物に対する農薬の影響について書いてみたいと思います。

(知的財産部 岩崎)

1)    Genetically modified plants: Global Cultivation Area, Cotton. (March 29, 2010)  GMO Compass, http://www.gmo-compass.org/eng/home/
2)    Global Organic Textile Standard, Version 2.0. (June 6, 2008) http://www.global-standard.org/
3)    安全性審査の手続を経た遺伝子組換え食品及び添加物一覧. (May 12, 2010.)厚生労働省医薬食品局食品安全部, http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/index.html
4)    遺伝子組換えワタ「ワタ3006 系統」に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案).(July 7, 2005) 食品安全委員会, http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/index.html
5)    Mirid Bug Outbreaks in Multiple Crops Correlated with Wide-Scale Adoption of Bt Cotton in China. (May 13, 2010) Science, [Epub ahead of print]




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