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コラムVol.21 Oh My GOTS!!again [GOTSのそこも分からない](3)

「明けましておめでとうございます。」とは、なかなか言いにくい2012年の年明けでしたが、皆様も年賀状に何と書くか悩まれたのではないでしょうか?
この正月も昨年同様、年末にJAで購入した輪飾りと畑の野菜をふんだんに使ったおせちで穏やかに迎えることができました。年末の収穫では、かちかちに凍った畑の土からネギを掘り起こし、ほうれん草を収穫しました。大根は黒マルチを張ってあって簡単に抜くことができ、早速大根の辛子ビール漬を作りました。里芋は前に収穫したものがまだ残っているので掘らないでも済みました。やっと寒さにあたって糖分をたっぷり蓄えたほうれん草は甘みが強く、おかずというよりはまるでデザートのよう…畑の最高の冬野菜です。
しかし、雨が降りません。せっかくのほうれん草も大きくなるそばから枯れて行き、真ん中へんの枯れていない葉しか食べられません(写真のほうれん草は去年のものなので、まだ枯れていません)。ブロッコリーも本体が枯れる前に小さいうちに収穫してしまいました。植えつけたタマネギの新芽も枯れていきます。雨水だめの氷を割って焚き火で溶かして撒いたりしていますが、焼け石に水の状態です。週末に雨か雪の予報が出ているので、観測史上3位の連続乾燥注意報もこのコラムがアップされる頃には終わっているでしょう。畑カレンダーもそろそろ一区切り…もう少ししたらジャガイモの植え付け場所を決めて畝作りが始まります。

東北コットンプロジェクト
「東北コットンプロジェクト(http://www.tohokucotton.com/)」に関連して、前回はワタと他の農作物の耐塩性の比較を紹介しました。今回はワタの品種による耐塩性の違いをお話しましょう。
「品種」と書きましたが、通常栽培されているワタは、「品種」より上位の分類単位の「種」レベルで、4種が知られています。いずれもワタ属(Gossypium)に属し、リクチメン(G. hirsutum)、カイトウメン(G. barbadense)、シロバナワタ(G. herbaceum)、キダチワタ(G. arboreum)で、G. herbaceumとG. arboreumは、合わせてアジアワタと呼ばれています(カタカナの和名は異名が多く、正式なものが特定できなかったので、複数の出典を参照して識別しやすいものを選びました)。世界規模の生産量はそれぞれ90%以上、3~4%、アジアワタは合わせて2%とされています(Wikipedia, “Gossypium”)。Shannon  1) の総説によると、G. barbadense、G. herbaceum、G. neglectum(G. arboreumの分類上の異名)は、G. hirsutumより一般に耐塩性が高い、とされています(原引用文献が入手できなかったので、数値は不明)。
G. hirsutumは、広く栽培されているため、品種の耐塩性の比較については、数多く報告されています。Basalら  2) が12品種の耐塩性について比較したところ、塩濃度を125mM (0.73%NaCl)に上げてもワタ植物体の乾燥重量が殆ど減少しなかったものが4品種、14~19%減少したものが5品種、30%前後減少したものが3品種ありました。また、耐塩性の高い品種の水分吸収は塩濃度による影響が少ない、という結果が得られました。Akhtarら  3) は、9品種の耐塩性を水耕栽培で比較しました。1立方メートルあたり140molの塩濃度(0.82%NaCl)で45日間栽培した地上部植物体の湿重量は、塩濃度ゼロと比べると、3品種で20~28%減少し、2品種で33~42%減少、4品種で60%前後減少しました。耐塩性の高かった3品種は残りの品種と比べて、植物体中のナトリウムイオン濃度が低く、カリウムイオン濃度が高い、という傾向が認められました。耐塩性の高い3品種と低い1品種を21デシジーメンス/メートルの塩化ナトリウムを含む土に植えて鉢栽培したところ、塩化ナトリウムを加えない場合と比べて耐塩性の低い品種は綿花の数が69%減少したのに対し、耐塩性の高い品種は42~57%の減少にとどまりました。(以上の数値は、グラフから算出しました。)
一方、耐塩性が高いとされるG. barbadenseではどうかというと…、AshourとAbd-El’Hamid  4) は、13品種のエジプト綿について、4000ppm(0.4%)の塩化ナトリウムと塩化カルシウム(それぞれ等量ずつ)を土に加えてワタの種をまき、鉢栽培しました。ワタでは、発芽時から幼苗にかけては、それ以後の成長した植物体に比べて耐塩性が低いことが知られているので、実験開始から30日後に生き残った幼苗の数を塩類を加えていない鉢と比べると、生残率は6.7%~56.0%と品種により大きく異なりました。ただ、生き残った幼苗の高さと葉の数については、生残率との相関性は認められませんでした。
ワタの耐塩性のメカニズムは、上記の結果からは、水分の吸収能力やナトリウムの吸収排泄能力が関係しているようです。塩性植物やテンサイなどの耐塩性の高い植物ではグリシンベタイン(トリメチルグリシン)というアミノ酸類似物質が浸透圧を調整して植物の耐塩性に寄与している、とされています(http://www.sangetsu.co.jp/hibizaidan/pdf/hibi_19/tanaka.pdf)。同様にワタにもグリシンベタインが存在します。グリシンベタインの存在量は品種によって異なり、水不足などのストレス下では、綿実の収穫量と植物体あたりの綿花の数は、グリシンベタインの存在量と有意な正の相関を示しました  5) 。また、ヤマホウレンソウ(Atriplex hortensis)のグリシンベタイン合成遺伝子を導入した遺伝子組換えワタは、非組換えワタより高い耐塩性を示しました  6) 。ワタの耐塩性についてもグリシンベタインが重要な役割を持っているようです。
東北コットンプロジェクトでも耐塩性の高い種や品種を選べばよいのですが、気候風土との関係もありますので、何でも良い、というわけではありません。そもそもG. hirsutumもG. barbadenseも低温に弱く、福島県北部が北限とされています  7) 。地球温暖化のおかげで宮城県でも栽培可能なのでしょうか? 一方、和綿(G. arboreum)は、比較的低温でも良く育ち、北限は、仙台、会津、新潟とされています(http://homepage2.nifty.com/wamen-nouen/wawata.html)ので、名取市で栽培可能です。東北コットンプロジェクトで栽培しているのは和綿なのでしょうか?ちょっと探した限りではワタの品種についての記載は見つかりませんでした。

コットンの放射線量
東北コットンプロジェクトが行ったコットンの放射線量の検査結果が12月28日に発表されました。名取市の農地の放射能汚染は土浦市と同程度ですので(http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-24.pdf)、コットンについては、筆者は気にしていないのですが、放射能汚染を危惧してこのプロジェクトを批判する声もあり、実施したようです。圃場のセシウム13
畑のサムネール画像
7の線量は23Bq/kg、96Bq/kgであり、収穫されたコットンの線量は検出限界未満でした。ただ、この時のコットンの検出限界が47Bq/kgと若干高いので、検出限界のセシウムが含まれていると仮定して、外部被爆量と、食品でもないのに内部被爆量まで計算して出荷に問題なしと判断されています。食品でも「検出されず(ND)」の表示はあっても「検出限界」の表示がない不十分ものがありますので、東北コットンについては、放射能の安全情報は十二分に提供されていると思います。

東北コットンプロジェクトとワタの耐塩性については、ひとまずこんなところでお開きとしましょう。またテネリータスタッフから情報が入るようでしたら取り上げたいと思います。タイトルと違ってGOTSについて何も触れませんでしたので、次回はGOTS Ver.3で新たに禁止物質として記載された「機能性ナノ粒子」についてお話ししましょう。タイトルの”Oh My GOTS!!”は半年使い続けて飽きてきたのでやめましょうね。
(知的財産部 岩崎)
 1) Shannon M.C. (1997) Adaptation of Plants to Salinity. Advances in Agronomy. Vol. 60: pp75–120.
 2) Basal H., Demiral M.A., Canavar O. (2006) Shoot biomass production of converted race stocks of upland cotton (Gossypium hirsutum L.) exposed to salt stress. Asian J Plant Sci 5: 238–242. 
 3) Akhtar J., Saqib Z.A., Sarfraz M., Saleem I., Haq M.A. (2010) Evaluating salt tolerant cotton genotypes at different levels of NaCl stress in solution and soil culture. Pak J Bot 42: 2857–2866. 
 4) Ashour N.I., Abd-El’Hamid A.M. (1970) Relative salt tolerance of Egyptian cotton varieties during germination and early seedlings development. Plant Soil 33:493–495.
 5) Sarwar M.K.S., Ullah I., Rahman M., Ashraf M.Y., Zafar Y. (2006) Glycinebetaine accumulation and its relation to yield and yield components in cotton genotypes grown under water deficit condition. Pak J Bot 38:1449–456.
 6) Zhang H., Dong H., Li W., Sun Y., Chen S., Kong X. (2009) Increased glycine betaine synthesis and salinity tolerance in AhCMO transgenic cotton lines. Mol Breeding 23:289–298.
 7) 環境省 (2011) 除草剤グリホサート耐性ピマワタ(改変cp4 epsps, Gossypium barbadense L.) (MON88913, OECD UI : MON-88913-8) 申請書等の概要. バイオセーフティクリアリングハウス
http://www.bch.biodic.go.jp/download/lmo/public_comment/H23_5_13MON88913-8ap5.pdf
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