ブログ

コラムVol.7 オーガニックコットンと地球温暖化


アピオスの花.jpg
日頃の行いが良いせいか、茨城の畑の作業日は梅雨の雨も止んで、太陽が顔を出すこともしばしばです。
収穫期を迎えて次々と品種ごとに掘り出されるジャガイモの食べ方と保存に頭を悩ます季節となりました。収穫量は去年の倍かもっとあるでしょう。アピオスや落花生は目立たないながらも花をつけ、特に力をいれているジャンボ落花生周りは入念に雑草とりをしています。スイカはもう小さな実をつけています。サツマイモは順調ですが、試しに植えた「安納芋」は根つきが悪く、数株を残して惨敗の状態です。気候や土が合わなかったのか?スギナの除去に撒いた除草剤が残っているのか?枝豆も収穫が待たれますが、去年に続いて今年もだめそうな雰囲気があり、何が悪いのか頭をひねっています。
俄か農夫には暑い中でのつらい作業が続きますが、家に帰って畑の収穫を肴に飲む冷えたビールの旨いこと!!大きなジャガイモと一緒にとれる指の先程度の小さなジャガイモを素揚げにして塩を振ると最高です。
ゲリラ豪雨被害が報道される中、今回は「地球温暖化≒温室効果ガスの増加≒二酸化炭素の増加」についてお話しましょう。
ジャガイモの収穫.jpg
コットンは、ほぼ100%セルロース(繊維素、cellulose)からできていて、セルロースはβ‐D‐グルコース(ブドウ糖)が重合してできた多糖類=天然ポリマー繊維です。セルロースの分子式は(C6H10O5)nと表されます。セルロースの原材料は光合成によって固定された大気中の二酸化炭素(CO2)です。計算するとコットン1 kgは約1.6 kgのCO2を固定していて、テネリータのバスタオル(400 g)1枚あたり650 gのCO2が大気中から除かれていることになります。環境家計簿 1) から逆算すると、このCO2量は、電気1.8kWh、都市ガス0.31 m3、水道1.8 m3、灯油0.26リットル、ガソリン0.28リットルに相当し、人間が呼吸によって吐き出すCO2のほぼ1日分 2) となります。
たいした量じゃないって?
う~ん…そう言われるとこの先の話の展開に困りますが…
ここは強引に話を続けましょう。
それでも、太古の生物が固定した炭素をわざわざ地中から取り出して作っている化学繊維に比べれば、コットンは遥かに地球温暖化の抑制に貢献している繊維といえます。廃棄されて焼却されたとしてもカーボンニュートラルであり、化学繊維製品の代わりにコットン製品を使用することは立派な低炭素社会実現活動の一環といえるでしょう。
さて、ここまでのお話は、オーガニックコットンであろうと普通のコットンであろうと一緒です。でも、いくつかのオーガニック系のホームページには「オーガニック農法は土壌中の微生物を活性化することにより、土のCO2吸収能力が増加して炭素を取り込む」という内容の記事があります。一見もっともらしく聞こえますが、よく考えてください。炭素固定は光合成によって行われ、水の中ならともかく、土の中には殆ど光が届かないのですよ。土の中で光合成がそれほど起きるはずがありません。
では、ガセネタかというと、そうではありません。これらの記事の出所をたどっていくと、ロデール研究所のWEBマガジン「The NEW FARM」の記事(日本語訳) 3) に行き当たります。ロデール研究所の農耕法比較試験場のデータによれば、有機肥料のみを使ったオーガニック農業の土壌では23年間で15~28%の土壌炭素の増加が認められるのに対し、窒素肥料を併用した慣行農業では統計的に有意な増加は認められませんでした。このうち1981年~1995年の15年間の土壌炭素量のデータは学術雑誌Natureに発表されています  4) 。詳しい説明は省略しますが、農地に投入される炭素の量はオーガニックでも慣行農業でもほぼ一定にしてあります。この土壌炭素量増加のメカニズムは次のように説明されています。
(1)オーガニック土壌では慣行農業土壌に比べ、アーバスキュラー菌根菌が活性化されており 5) 、菌根菌はグロマリンという有機物(糖たんぱく質)を分泌する 6) 。グロマリンは土壌粒子を結びつけて土壌団粒を形成する。菌根菌は植物の根に共生するカビで、菌根菌が土壌中の栄養分(リンなど)を植物体に輸送し、植物は光合成の産物(糖)を菌根菌に与えるという共生関係を持っている。結果として植物が光合成によって固定した炭素を土壌中に土壌団粒として隔離(sequestration、直接の炭素固定ではないのでこの用語を使っている)できる。
(2)土壌団粒や収穫後の植物体残渣として土壌中に貯えられた有機物はオーガニック土壌では、ゆっくりと分解され、CO2の大気中への放出も緩やかである。一方、慣行農業では窒素肥料が有機物の分解を促進し、CO2はより速やかに大気中へ放出される。(引用文献入手できず未確認)
以上の試験はダイズとトウモロコシに対して実施され、目的に合わせてうまく設計されている印象があります。メカニズムの説明も単純すぎるきらいがありますが、オーガニック農業と慣行農業のCO2の土壌隔離能力の差を統計的に有意な数値データとして示していることは確かです。ロデール研究所では化学肥料や農薬の製造に使用される化石燃料から放出されるCO2の影響も考慮して、オーガニック農業は慣行農業に比べて37~50%もCO2の排出量を削減できるとしています 3) 
オーガニックコットン農地で菌根菌が活性化されているかどうか定かではありませんが、菌根菌の菌糸分岐因子であるストリゴラクトン類のうち初めて発見されたステリゴールがワタ植物由来 7) あることから、オーガニックコットンも同様のメカニズムにより農地土壌中にCO2を隔離していると考えられます。化学肥料や農薬の製造にかかわるCO2の排出量の削減についても同様でしょうから、それ自体が繊維として固定化しているCO2も加えて、オーガニックコットンは、低炭素社会により適した温室効果ガス削減効果の高い繊維・衣料アイテムと言えるでしょう。
これまで、農薬、遺伝子組換え、地球温暖化の側面からオーガニックコットンのお話をしてきました。次回は、これまでのお話を一度まとめてみたいと思います。
(知的財産部 岩崎)
1) (社)関西経済連合会. 環境家計簿. 
2) 田口文章(2007) 人間の口からでる二酸化炭素量. 
3) ポール・ヘパリー. (2003) オーガニック農業は、炭素を大気中から隔離して土壌中の栄養物にする. The New Farm 2003/10/15. 
4) Drinkwater LE, et al. (1998) Legume-based cropping systems have reduced carbon and nitrogen losses. Nature 396:262–265.
5) Douds DD Jr, Millner PD. (1999) Biodiversity of arbuscular mycorrhizal fungi in agroecosystems. Agric Ecosys Environ 74:77–93.
6) Rillig MC, et al. (2002) The role of arbuscular mycorrhizal fungi and glomalin in soil aggregation: comparing effects of five plant species. Plant Soil 238:325–333.
7) 秋山康紀, 林英雄. (2003) アーバスキュラー菌根共生におけるシグナル物質. 蛋白質・核酸・酵素51:1024–1029.

Twitterに投稿